フェミニズム概論-①

 ども、けろです。

 要望を頂いたので頑張ってフェミニズム&ジェンダー概論を書いていこうと思います。他の人が既に書かれている内容と重複する内容もありますがご容赦くださいm(_ _)m

 

 第1回~は『フェミニズム概論』と題して書き綴ろうと。

 ※「概論」などと偉そうなタイトルですが1人の学生の意見ですので決して鵜呑みにしないでください私見も含まれますのでその点をご理解いただけると幸いです。また、「間違ってるよ!」「ここ足りてないよ!」等があればその旨を連絡していただけると適宜修正します。

 

概論のカバー範囲

【1】what is feminism? (今記事)

  (1) the basic definition of feminism

  (2) first wave feminism

  (3) second wave feminism

  (4) third wave feminism

  (5) fourth wave feminism

  (6) summary 

【2】diversity of feminism (次回)

【3】feminism and men (次々回)

 

こんな感じで書いていきます。

 

【1】what is feminism? 

(1) the basic definition of feminism

A. definition in the dictionary

 フェミニズムの辞書上の主要な定義は主に以下の通り。

 

 weblio: 男女同権と性差別のない社会をめざし、女性の社会的・政治的・経済的地位の向上と性差別の払拭を主張する論。

 コトバンク:女性解放思想,またその思想に基づく社会運動。

 Oxford Dictionaries: "The advocacy of women's rights on the ground of the equality of the sexes."

 Cambridge Dictionary: "the belief that women should be allowed the same rights, power, and opportunities as men and be treated in the same way, or the set of activities intended to achieve this state."

 

B. purpose

 上記のように、フェミニズムの目的は「男女平等/女性の地位向上」であり、そのための社会的・政治的活動を主とする運動の総称です。

 その動機や思想は一種類ではなく、時代の流れと共に複雑に枝分かれしているため、一本の論として捉えることはできません(私自身全てを把握・理解しているわけではありません…)。

 しかしその目的は「男女平等思想」「家父長社会からの解放」に支えられているという点で共通項もあります。

 もちろん、女性に対する差別や抑圧・偏見を払拭することが喫緊の課題ではありますが、家父長社会によって作られた「性別役割規範」「性的偏見」という人工物を撤廃し、一個人が「性別」ではなく「個人」として評価され、尊厳を持って扱われる世の中を目指すこと、それがフェミニズムの究極的な目的であると私は捉えています。

 例えば「男勝りの女」「女々しい」「男らしさ」といった性に基づく言説の撤廃、セクハラ等の不正義の根絶です。

 

(2) first wave feminism

(私の研究内容に被る部分があるため細かめです)

A. introduction

 19世紀~20世紀前半にかけて展開された、女性の法的権利(Legal right)の獲得を主目的とする運動。アメリカにおいて公式出発点とされるのは1848年に開催されたセネカフォールズ女性大会です。

 ここでいう「法的権利」とは、財産権(property right)教育権(right of education)離婚の権利(right to divorce)就労の権利(working right)等です。その中でもとりわけ当時のフェミニスト達が獲得しようと紛糾していたものが参政権(right to vote / suffrage)です。

 

B. backgrond(読み飛ばしても構いません)

 今では当たり前である遺産相続権や女性の高等教育、参政権ですが、19世紀は非常に制限された権利でした。

 翻訳家・作家・社会改革運動家として知られるマーガレット・フラー(Margaret Fuller: 1810~1850)は、女性というだけでハーバード大学に入学することができませんでしたし、当時の男性作家達が不自由なく執筆活動を行えたのに対し、フラーは父親の遺産を叔父に強奪され、経済的に不自由な生活を送っていました(*1)。女性というだけで高等教育を受ける権利・財産を享受する権利を剥奪されていました。

 また、女性の政治参加に対しても同様で、保守的な男性や中産階級の女性、教会からの反発を受けました。反発のレトリックとして使われたのは1.社会的見地、2.宗教的見地、3.生物学的見地等です(*2)(*3)。ここに関しては省きます。

 

 運動の担い手はエリザベス・スタントン(Elizabeth Cady Stanton: 1815~1902)、リュクレシア・モットー(Lucretia Mott: 1793~1880)、スーザン・アンソニー(Susan B. Anthony: 1820~1906)ら、クエーカー教徒(Innner Lightを理念として掲げ、男女平等を追求する一派)を中心としていました。

 当時の活動方法は主にタウンホールでの集会、教会での啓蒙活動等です(今にも通ずるものがあると思います)。

 当時の女性参政権を取り巻く環境はとてもシビアでした。集会を開けば石を投げられ、投票行動を強行すれば逮捕され、住民投票は反対派勢力の団結行動により否決される等、1848年の勃興から実に72年かかり、1920年にようやく憲法修正が行われ、認められるに至りました。

 

C. importance

 第一波フェミニズム運動の重要性は、「人間としての権利の獲得」にあります。国家が国民に対して保証すべき最低限の権利の獲得です。

 アメリカ独立宣言(Declaration of Independence, 1776)の内容("all men are created equal~")を「女性が含まれていない」と批判し、1848年のセネカフォールズ大会のDeclaration of Sentimentsでは"all men and women are created equal"と述べています。

 性別に依らない法的権利の獲得が、第一波フェミニズムの主眼であり、現在ではほぼ全ての国で達成されました。

 

First-wave feminism - Wikipedia

 

(3) second wave feminism

A. introduction

 第二波フェミニズム運動は、法的平等の希求を主としていた第一波と異なり、「市民権(Civil Right)」の獲得を主としています。主に1960年代から広く興った運動です(20世紀初頭から萌芽は存在していました)。

 

B. importance

 具体的には、女性の職場での昇進(job promotion)中絶の合法化(reproductive rights)等です。自由主義個人主義的側面もあり、「女性の選択肢の拡充(choice of women)」を希求する動きです。また、権利として就労が保証されていてもそれを実行に移せない(=専業主婦として家庭に閉じ込められていた)女性達が多くいたため、そうした女性達を解放しようという動きも含まれます。

 ベティ・フリーダン(Betty Friedan: 1921~2006)の著作「女性らしさの神話」(The Feminine Mystique)はこの運動に大きな影響をもたらしました。

 

個人的なことは政治的なこと(The personal is political)」というスローガンも積極的に用いられました。

 

Second-wave feminism - Wikipedia

 

(4) third wave feminism

A. introduction

 第二波フェミニズム運動に対する批判として主に1990年前後を境に勃興。

 複雑に分派していくため何を持って「第三波」と定義するかは難しいが、「多様」な女性の権利を認めていく運動を指します。

 

B. importance

 第二波フェミニズム運動の担い手が「白人中産階級(white, middle class)」であったのに対し、第三波フェミニズムとされる運動は実に多くの人によって担われました。人種・文化・民族・エスニシティ・社会階層等、多様です。

 かつ、第二波フェミニズムがどちらかといえば「性別」というものを否定する運動であったのに対し、第三波フェミニズムは「女性の多様性」を積極的に肯定する運動でした。より個人主義的な運動という側面もあります。

 

Third-wave feminism - Wikipedia

(e)merging. #1: Macska "Living in Postmodernity"

What Is Third Wave Feminist Movement? | Viva

 

(5) fourth wave feminism

A. introduction

 第一~第三波フェミニズムまでは知っている人も多くいると思いますが、これは近年になって広がり始めているため、もしかしたら知らない人もいるかと思います(私自身勉強中ですので知識の誤り等が含まれる恐れがあります。くれぐれも鵜呑みにしないでください)。

 

 私見を綴ることによる誤解を防ぐためにWikipediaの言葉をそのまま引用すると(いやそもそもWikipediaとか信憑性のないソースやんけというツッコミはごもっともですがご容赦ください)、

 

"Fourth-wave feminism is the resurgence of interest in feminism that began around 2012 and is associated with the use of social media. According to feminist scholar Prudence Chamberlain, the focus of the fourth wave is justice for women and opposition to sexual harassment and violence against women. Its essence, she writes, is "incredulity that certain attitudes can still exist."

 

となります。セクハラ問題や女性に対する暴力等は第三波フェミニズムでも取り上げられるようなことですが、第四波はソーシャルメディアSNSと強い結びつきがある運動です。例えばハッシュタグの #me_too や #we_too 等に代表される動きです。

 また、以下にリンクを貼りましたが、body positiveやtrans-inclusive等、より私たちの生活に密接で、一個人に関わりの深い運動と言えると思います。

 

B. importance

 私見ですがこの波の先鋭性としては、1.(スマホ等の普及に伴い)より広範に繋がることができる、2.一個人の女性達が声を上げることを容易にする、の2点に挙げられると思います。

 社会で孤立していると感じた女性達がインターネットの普及によって物理的距離を越えて繋がることができることは、フェミニズムの普及・伝播に非常の有益であると思いますし、多くの人々が声を上げることができるようになったことは素晴らしい進歩であると感じます。

 

Fourth-wave feminism - Wikipedia

6 Things To Know About 4th Wave Feminism

 

(6) summary

 フェミニズムにおける「波」というものは、(私にとってはですが)歴史的な区分と認識を容易にするものであり、自身の信条のあり方を定義するものではないと感じます(i.e.「私の信条は第二波だ!」)。

 たまにディベート上で「これは第二波と第三波の対立です」という言説を聞きますが、フェミニズムの正確な意味からするとこれは誤りだと思っています。信条と信条の対立はあり得ますが、歴史上の区分が実社会で対立することはないのでは?と感じるためです。

 

 しかしながら、自分が標榜する考え方の源流はどこなのかを知ることは、自分のアイデンティティの在り処を知ることと同義であると考えているので、こうした区分に基づく認識は非常に大事であると思っています。

 

 

 長くなりましたが、『フェミニズム概論-①』として「そもそもフェミニズムってなんだよ/どんな軸を持ってるんだよ」という問いに答えることができていれば嬉しく思います。

 

 

*1: Steele, Jeffrey. Transfiguring America: Myth, Ideology, and Mourning in Margaret Fuller’s Writing (Missouri UP, 2001)

*2: 篠田靖子「アメリ婦人参政権運動の反対勢力」『金城学院大学論集』(人文科学編)13号(1989年), 109-130頁

*3: Wheeler, Marjorie Spruill. One Woman, One Vote (NewSage Press, 1995)