ジェンダー論議:欅坂46がアイドル界にもたらした新たな「制服」の視座

 どうも、けろです。

 3月も中旬に差し掛かり、あと少しで学生としてのこの優雅な時間が終わってしまうことに対して途方もない虚無感を抱いています。

 タイムリープしたい。タイムリープした先で小松菜奈似の美人か幼馴染に「お前……タイムリープしてね?」って聞かれたいし、「未来で待ってる」って言われたいし、奥華子BGMを背景にキャッチボールとかしたい。

 

 そういえば最近、やっと溜まっていた映画リストやら積ん読やらの消化を始めました。めちゃめちゃ楽しい。

 積ん読なので過去の自分の出費であることには間違い無いんですが、それでも今の自分の財布は動かないので、お金かけずに楽しめている感があって得した気分です。いや冷静に考えるとプラマイゼロなんですけど。

 

 

 さて、今回はディベート史の更新ではなく、ずっと前から書こうと思っていた考察ブログです。ジェンダーにも関わっていると思います。

 以下、私見に基づくただの考察です。ただの個人の思想の垂れ流しです。何かを決めつける意図は全くありませんし、異なる考えを否定する意図は一切ないので、批判的に読んでください。ご意見、ご質問等ありましたらご自由にどうぞ!

 

 

目次

0.  欅坂46とは

1. 既存のアイドル表象における「制服」の位置付け

 a. 「中高生」との疑似恋愛の固定化

 b. 処女性の礼賛

2. 欅坂46がもたらした「アイドル」の新しい形

 a. 楽曲の持つメッセージ性

 b.「制服」に対する新たな価値の付与

3. 推しメンが良い

 a. 石森虹花

 b. 小池美波

 c. 平手友梨奈

 

0. 欅坂46とは

 まぁ、これは冷静に義務教育レベルで知っておいてほしい知識です。BLEACHの詠唱とか、鬼道名、オサレポエムと同じくらい日常生活で必要です。当然ディベートにも活きてきます。アイドルモーションとか出た時に無双できるので、とりあえず坂道グループのメンバーの顔と名前は覚えましょう。週に一度、冠番組を見てリサーチするのも必須です。

 

 さて、欅坂46に関して簡潔にまとめると、

 ・2015年に秋元康プロデュースの下生まれたアイドルグループ

 ・乃木坂46に続く、坂道グループの2つ目として誕生(姉妹グループは乃木坂46、日向坂46(旧けやき坂46))

 ・201938日現在、8枚のシングルと1枚のアルバムをリリース。

 ・毎週日曜日深夜0:30~、「欅って書けない?」という冠番組を担当

 

 というのがベーシックな情報かと思います。

 あとまぁ、8作品連続で楽曲のセンターを務めている平手友梨奈(以下メンバーの敬称略)が映画『響』で主演を務め、日本アカデミー賞の新人賞を受賞したりと、何かと話題性のあるグループです。

 以下、シングル表題曲のMVのリンクを貼ります。作業用BGMとしてどうぞ。

 

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1. 既存のアイドル表象における「制服」の位置付け

 日本のアイドル、とりわけ「女性アイドル」の楽曲表象において、「制服」はある種アイコンとしての中心的な役割を担ってきた側面があります。

 もちろん、ももいろクローバーZやでんぱ組.incのような、制服をアイコンとして設定していないアイドル像も無数にいるため、一概に「制服」がアイドルの代名詞かと言われればそうでは無いのかもしれませんが、それでも『セーラー服を脱がさないで』に代表されるおニャン子クラブや『ヘビーローテーション』『言い訳Maybe』等の代表曲の48グループは、その楽曲の多くでメンバーが「制服」あるいは「制服を連想させる服」を身にまとっていました。

 では、「恋愛」を楽曲の主要素として「可愛らしさ」を前面に押し出した女の子たちが、楽曲や表象・イメージにおいて「制服」を身に纏っているということは何を意味するのでしょうか。

 

a. 「中高生」との疑似恋愛の固定化

 「制服」と聞いて真っ先に連想するのは、それを日常的に身に纏う中学生や高校生といった「学生」だと思います。10代の限られた時間を「学生」として謳歌する彼女たちの「衣装」としてもっとも共通して当てはまるのはセーラー服やブレザーといった「制服」であり、だからこそ私たちは「制服を着た女性」を見ると無意識的に彼女たちが学生であることを連想します。それくらい、私たちの意識の中に「制服」というものは「10代の少女」と密接に結びついたシンボルであると言えるのではないでしょうか。

 

 そしてそもそも、「アイドル」と「ファン」の関係の中でもっとも中心的になりやすい価値観が、「疑似恋愛」です。アイドルは恋愛を中心とした歌を歌い、「あなたのことを好きになった私」ないし「恋する男性の視点を語る女性」といったメッセージを発信します。ファンはグループの中から「推しメン」を見つけ、その子の握手会やチェキ会に通い、「自分と推しメンだけの空間」を満喫します。その瞬間だけはファンとアイドルは間違いなく二人きりであり、ファンはその場で味わう空気感を糧に応援を続ける、という図式です。

 これは、ファンとアイドルの関係が「疑似恋愛」を前提としている部分が強いからであり、だからこそアイドル界では恋愛が公式、ないし不文律としてご法度となっているのだと思います。「疑似恋愛」を楽しんでいるファンにとって、その関係性を破壊する「リアル彼氏」の存在は許し難いものであるからです。

 

 もちろん、アイドルのファンの中には女性のファンもいますし、単に可愛い・タイプの女の子を応援したい、というファンもいるので、一概にファンとアイドルの関係を「疑似恋愛」のみと断定することは些か性急です。

 しかしながら、所謂「コア」なファンはその大半が「疑似恋愛」としての関係性を楽しんでおり、(アイドルを実際の恋愛対象として好きになった)「ガチ恋勢」のファンも存在しているように、やはりファンとアイドルの関係性の中で「疑似恋愛」というのはいまだに強い影響力を持っているのだと推察できるのかなと。

 

 ここでもう一つキーになるのが、「制服」の存在です。

 「疑似恋愛」という関係性を構築する過程において、多くのアイドルが「制服(あるいはそれを連想できる衣装)」を身に纏っています。それは楽曲であったり握手会であったりと様々ですが。

 これに関しては、制服を着たアイドルが先に登場したのか、それとも社会のニーズ(らしきもの)に合わせてアイドルが制服を着るようになったのか、わからない側面もあります。卵が先か鶏が先か、というやつです。

 ただ、20代を迎え、本来であれば制服を卒業しているはずのメンバーが20代半ばになっても制服を身に纏っているという光景は、やはりアイドル=制服=中高生という図式に繋がりかねないなぁと思います。

 

 

 つまり結果として、「制服」を着たアイドルが握手会や楽曲等の表象を通じてファンとの「疑似恋愛」という関係を構築しているという図式そのものが、「中高生」に対する幻想の表出のように感じてしまうし、その関係性というのが、「本来自分たちが経験することのできなかった時間の追体験」のように写ってしまう気がします。

 別にそれそのものが良いとか悪いとか、そういうことを言いたいわけではないです。

 ただ、一つの見方としてそういう捉え方ができるな、という。

 

b. 処女性の礼賛

 「制服」が「中高生」を連想させるアイコンとして機能しうることは前述しましたが、「制服」と「恋愛禁止」が結びついた時に生まれる価値観の一つとして、処女性の礼賛というものがあるのではないかな、と思います。

 これに関してはファンサイドの捉え方が人によって千差万別であるし、アイドル個人がどういった雰囲気の人かによっても影響力は変わってくると思います。

 所謂「ロリ」っぽい雰囲気の黒髪のアイドルと、大人っぽい色気とエレガントなスタイルを武器にするアイドルとでは、「恋愛」がどの程度重要な要素として働くかは異なります。

 しかしながら、前者のアイドルにとって過去、ないし現在の恋愛が「不祥事」として働く原因は、彼女たちのような「中高生」には「処女」でいて欲しい、彼女たち「中高生」は処女でなければならない、というような無言のプレッシャーのようなものにあるのではないか?と思います。かつ、それが常態化したアイドル界では、そうした価値観が再生産されやすいのではないか、と推察できます。故に女性アイドルは30代前後でその多くが「卒業」「引退」という形でアイドルを辞めてしまいます。男性アイドルは50代になっても現役だというのに。

 これは付加的ですが、処女性と純粋さ、無垢さのような価値観は割とセットになりやすい気もするので、これらも複合的に「アイドル」に向けられる意識的・無意識的な期待なのかな?とも。

 

 特に最近の48グループには、そういう雰囲気のメンバーが多いのでは?と感じます。あくまで主観ですが。

 

 

2. 欅坂46がもたらした「アイドル」の新しい形

 もちろん、前述の48グループや既存のアイドルグループの中にも、所謂「典型的なアイドル像」には当てはまらないメンバーはいました。金髪のアイドルやゴリゴリにピアスを開けたアイドル等々。自分はそういうメンバーまじで好きでした。かつ楽曲もバキバキのロックチューンやダンスナンバーみたいなのが好きだったので、アイドルの楽曲が全部「恋する誰かの気持ち」を歌ったものであるとは言いません。

 ただ、これらは全て「制服」が「純粋で無垢な中高生」を(無意識的かつ)全体的なキーコンセプトとするグループの中におけるメンバー一個人という話であって、「制服」が内包するコンセプトそのものを揺るがすものではありませんでした。

 

 そういう意味で欅坂46は、そもそもそれまでのアイドルのコンセプトの一つであった「制服」のイメージを根底から覆す、全く新しいコンセプトのアイドルであるといえます。

 

a. 楽曲の持つメッセージ性

 さて、このブログをここまで読んだ方なら、きっとこの記事の最初の方に貼った怒涛のシングル表題曲MVを見ていただけたと思います(期待の眼差し)。

 欅坂46の楽曲は、そのMVのクールさのみならず、その歌詞のメッセージ性の強さにも魅力があるように思います。素晴らしい。

 

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?
夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティ
〜1st シングル『サイレントマジョリティー』より抜粋〜

不協和音を
僕は恐れたりしない
嫌われたって
僕には僕の正義があるんだ
殴ればいいさ
一度妥協したら死んだも同然
支配したいなら
僕を倒してから行けよ!

〜4thシングル『不協和音』より抜粋〜

 

好きだと言うなら否定しない
嫌いと言われたって構わない
誰かの感情 気にしてもしょうがない

他人に何を 思われても
何を言われても聞く耳持たない
干渉なんかされたくない 興味がない

〜7thシングル『アンビバレント』より抜粋〜

 

白い羊なんて僕は絶対になりたくないんだ
そうなった瞬間に僕は僕じゃなくなってしまうよ
まわりと違うそのことで誰かに迷惑かけたか?
髪の毛を染めろと言う大人は何が気に入らない?
反逆の象徴になるとでも思っているのか?
自分の色とは違うそれだけで厄介者か?

〜8thシングル『黒い羊』より抜粋〜

 

 冷静に考えてAKB48であれだけ王道アイドル路線の「恋愛」の歌を書いてきた秋元康の振り幅の大きさ、もとい世界観の広さに、「これさすがにゴーストライターおるやろ」って勘繰りたくなるくらいにはドン引きしてるんですが、歌詞のメッセージ性が非常に強いです。 

 そしてそのどれもが、「大衆に迎合することへの嫌悪感」「濁流の中で自己を保とうとする強い反発心」を明示的に伝えています。社会派、といってしまうと途端にチープに聞こえてしまうかもしれませんが、既存の社会に対して何か特定の物事について問いかける、という側面もあり、これを「アイドル」が歌うということは非常に面白いな、と感じました。

 

 もちろん欅坂46の楽曲全てがこういうものかというとそうではなく、2ndシングルの『世界には愛しかない』や3rdシングルの『二人セゾン』は非常にキラキラとした雰囲気を湛えた楽曲ですし、アルバム『真っ白なものは汚したくなる』に収録されている『危なっかしい計画』は明るい女の子の青春を歌った曲です。

 ただやはり欅坂46というグループの魅力が120%発揮されるのは、少し絵的にダークで、バキバキとしたダンスの中で感情的なメッセージを歌う楽曲のような気がします。

 

b.「制服」に対する新たな価値の付与

 ここで話を主題である「制服」に戻します。前述のように、日本のアイドル産業における「制服」は、キーアイコンの一つであると思います。

 欅坂46は、その楽曲の多くでメンバーがアイドルのキーアイコンであった「制服」を身に纏っています(5thシングル『風に吹かれても』ではスーツ、6thシングル『ガラスを割れ!』ではMA-1を着ていたりするので、必ずしも全ての楽曲で制服を着ているわけではありません)。

 しかしながら彼女たちが歌うのは、「純真さ」を売り出す「恋する少女」としての姿ではなく、社会という荒波の中で必死に抵抗する「一人の若者」としての姿です。「制服」という、中高生特有の衣装を身に纏い、10代の少年少女たちが抱える悩みや葛藤を歌い、「多数派が猛威を振るう社会でも折れない姿」を顕現する。

 その鬼気迫る表情やダークな雰囲気のMV、強く刺さる歌詞には、既存のアイドルらしさといったものは垣間見えません。そこにあるのは「制服」への新たな意味の付与。

 

 10代という限られた時間、大人と子供の狭間で揺れ動く感情の興隆を、「制服」というアイコンを用いることで効果的に社会に伝播する。欅坂46というアイドルグループを、そういう風に捉えることができると思いました。

 

 ここまでが秋元康の狙いだとすると、彼はどこまで強かなのかと苦笑いが浮かんでしまうのですが、それでも彼が送り出した欅坂46というグループの持つメッセージは非常に強いと思います。

 欅坂46の魅力は、単に「笑わないアイドル」ということや、「強いメッセージを持つ楽曲」にあるのでなく、その表象そのものにあるのではないでしょうか。

 「制服」という、処女性や純真さの象徴として機能し、「中高生との疑似恋愛」を彷彿とさせるアイコンとしてのイメージを180度ひっくり返す表象全てが、既存のアイドルという型に収まらず、むしろアイドルという枠を再定義する役割を担っているような気がします。

 

 

3. 推しメンが良い

 アイドルといえば自分の「推しメン」を見つけ、テレビ番組やMVでその姿を見つけることが最大の楽しさといっても過言ではないです。さすがに過言かもしれません。

 欅坂46も例に漏れず、素晴らしいメンバーに恵まれています。最近はメンバーの卒業が多くファンとしては非常に悲しいですが、ここで筆者一押しの推しメンを紹介します。

 

a. 石森虹花

 元々はDAISY★GIRLSというアイドルグループで活動していたらしいです。歌が上手くてちょっと抜けてるところがあって、困り眉がとても素敵です。ちょっと幸薄そうな顔立ちも魅力の一つ。

 冠番組、『欅って書けない?』のクイズ企画でおばか女王の称号をもらって以降、番組内でおばかキャラが定着しつつあります。

 

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b. 小池美波

 関西弁と小動物のような顔立ちがとても素敵。初期の頃は髪の毛長かったんですが、個人的にはミドル〜ショートくらいの髪型が似合っていると思います。

 ポンコツキャラかと思いきや、番組内でコントを披露するなど体も張っています。ちょっと甘めのほんわかした声が癒しです。

 

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c. 平手友梨奈

 言わずと知れた絶対的センター。番組内で新シングルのフォーメーションが発表されるたびに「そろそろてち(平手友梨奈の愛称)以外をセンターにした方がよくない?」という意見がよく出てくるんですが、MVが公開されると「てちしかセンターできる子いないわ……」と全ての反対意見をねじ伏せる表現力の持ち主。

 楽曲での表現力の強さは前に貼ったMVを見ていただけるとわかるんですが、てちの魅力はそこだけではなく、楽曲と普段のギャップにもあります。

 笑顔が、めちゃめちゃ可愛いんです。くしゃっとするあの笑顔、きゅんってなります。そんな子が楽曲になったらバキバキのダンスと情緒豊かな表情でセンターを陣取るんだから、そりゃ圧倒的魅力って感じです。

 

 

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 また、去年は主演として映画『響』の主役を務めました。日本アカデミー賞新人賞受賞したのすごいですよね。彼女が「憑依型アイドル」と言われる理由が垣間見えた気がします。

 

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 とまぁ、ここまで好き勝手に長々と持論を書きましたが、これはあくまで「アイドル」というものを一部の角度から切り取って捉えた視点にすぎません。人によっては全く異なる分析をするかもしれませんし、そもそも現代のアイドル像が非常に多様化しているという点を踏まえると、ここで述べた内容が若干時代遅れ感があるというのも否めません。あくまで僕が捉える「持論」なので、晩御飯食べながら適当に流し読むくらいがちょうどいいと思います。そもそも個人のブログなんてそんなもんです。

 

 しかしながら、欅坂46がその楽曲を通じて作り上げた「アイドル像」というのは、そのコンセプトからまるで新しいものであり、その先進性には否定できない側面があるとも思っています。

 あと推しメンが可愛いです。

 上記のメンバー以外にも欅坂46には魅力的なメンバーがたくさんいるので、少しでも気になった方はぜひ日曜日深夜24:30~テレ東系列で放送中の『欅って書けない?』を見てください。youtubeには過去の放送回やメンバー・場面ごとのまとめ動画もあるのでそちらから見るのもありです。

 あと、今まで妹分として活動していたけやき坂46(読み:ひらがなけやき)が最近「日向坂46」へと改名し、めでたくシングルデビューが決まりました!めでたい!

 こちらはいわゆる王道アイドルらしい爽やかなテイストのグループで、楽曲はどこか懐かしい部分と新しい部分とが絶妙なバランスで溶け合っているので、そちらも合わせてチェックしてみてください。

 オススメのメンバーは潮紗理菜、東村芽依小坂菜緒渡邉美穂です!

 

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