ディベート小噺:オンラインは「公平」な環境を齎すか

 ども、けろです。

 一週間近く休みを取って居座る実家、平和すぎてまじでやることがないです。

 これはめちゃくちゃ良い意味で、夜は23時前にはやることがなくなるので寝るし、朝は目覚ましを使わずとも8〜9時くらいに起きるのでめちゃくちゃ健康的。仕事のストレスから完全に解放されているので伸び伸びとした休暇を満喫しています。

 果たして休暇明けにまともに仕事ができるのかさっぱり分かりませんが、明日は明日の風が吹きます。使い方があってるかは知りません。

 

 コロナ禍の影響もあって身の回りの色々なものがオンライン化していき、色々な意味で生活環境が変わっていますね。みんなの順応能力すごいなぁと思いながらも、オンラインであれこれできた去年がはるか昔のように思えるのが悲しいところですね。

 そんなわけで、withコロナ的な時代の中でふと思った疑問というかもやっとした吹き溜まりを記事にします。例によって建設的なものではないので日常の合間に適当に消費してください。ブログなんてそんなものなので。

 

 というわけで目次です。カスみたいなサインポストになりました。

0.はじめに

1.オンラインディベートの利点

2.オンラインディベートの欠点

3.それ踏まえての将来的な折衷案

 

0.はじめに

 そういえばパーラ大会がオンライン化してからまだ1年経ってないんですよね。今年の春先の大会はオフラインで計画していたために急遽会場となる大学が貸し出しを取りやめたために中止になってしまったので、実はオンライン大会って本当に最近のことなんですよね。

 そんな中で既に様々な知識やノウハウが蓄積されているのはまじですごいと思うし、コミとなる方々の対応力と順応力には舌を巻きます。

 プラットフォームも(良い意味で)多様化していて、当初はmixideaだけでしたが次第にzoomが加わったりDiscordが仲間入りしたりと、需要に合わせて色々な試行錯誤が行われているのは良いことですね。FBの自動翻訳がDiscordのことを「不協和音」って変換したのはめちゃくちゃ笑いましたが。

 

1.オンラインディベートの利点

 いきなり「オンラインディベートはダメ」とか言い始めても完全に厄介な老害と化すし議論としてもフェアではないので、比較材料としての利点をきちんと列挙しようと思います。というか総合的に見ればオンライン上でのディベートはデメリットよりもメリットの方が若干上回るんじゃね?と思ってます。

 

a)地理的ハンデの克服

  これが一番でかい気がします。というのもオフラインディベートがどこかしらの大学を会場とする以上、地理的なハンデは避けては通れない問題になるからです。

 大会数だけでいえば関東開催の大会が一番多いですし、メジャー大会の多くは関東で開催されます。もちろん名古屋や関西、九州での開催もありますし、それらの大会はコンセプトも様々で非常に楽しいのですが、どの大会も突き詰めれば「地理的な移動」が発生するため、これを克服しなければ大会に参加できないわけです。常に遠距離恋愛みたいなもんです(は?)

 例えば実家暮らしで親が厳しめだったりすると、頻繁な遠征はできなかったりするし、ひとり暮らしでもバンバン遠征するのは厳しかったりします(2点目と若干被りますが)。

 あとは練習機会に関してもそうですね。他大学の練習に参加したくても遠かったりするとそれだけでハンデになりますし。近くにパーラやってる大学が複数あれば良いけど、そうじゃないと孤立してしまいますから。

 その点オンラインディベートは、練習でも大会でもデバイスとネット環境があればどこにいても参加できるので非常にアクセスが高いです。東京にいながら関西や名古屋の大会に参加したり、九州にいながら関西の練習にお邪魔したりが可能になったのは、オンライン化の光と言えるでしょう。

 

b)経済的・身体的負担の軽減

 また、それに伴って経済的・身体的な負担が劇的に減った、というのもかなりのメリットだと思います。

 というのも、まじで遠征ってお金がかかるんですよ。関東→関西だと夜行バスで5〜7000円くらい、新幹線だと1万円強、飛行機だとLCC使って新幹線と同じくらい、みたいな。それに加えてホテルやネカフェ、ホステル等の宿泊施設が一泊3000円〜。

 特に地方勢(という言い方は関東中央主義的で好きではないですが)は関東での大会の度に遠征が必要で、東北や九州からの遠征ともなれば一苦労。そんなのお財布と体力の持久走です。一緒にゴールしような!

 この出費だけでかなりの額になるし、夜行バスで当日入りともなれば予選ラウンドは慢性的な寝不足との戦いです。これ普通にしんどい。

 それがなんということでしょう。オンライン化によって朝9時に起きてPCを立ち上げればレジが完了し、遠征に消えるはずだった数千円でなんやかんや良いものが買えるではありませんか(大改造劇的ビフォーアフター)。

 特に顕著なのは海外大会じゃないでしょうか。日本に居ながらにしてメジャーな国際大会に参加できるのはすごいことです。渡航費や宿泊費がまるまる節約できるわけですから。まぁ逆に時差の問題が新たに発生してくるわけですが。

 ディベーターの全員が全員めちゃくちゃ熱心にバイトできるわけでも、親からお小遣いや仕送りがもらえる経済資本を持っているわけでもありません。そりゃ大会によっては遠方援助があったりしますが、言ってしまえば雀の涙みたいな額で、一泊の宿泊費の足しになれば良いかな、くらい。まして兼部や兼サーしてたら「そこまでしなくてもいいかな…」って思う人はいるだろうし。

 

 というわけでディベート大会・練習のオンライン化は、地理的・経済的・身体的負担の大幅な軽減に寄与しているという利点があります。

 

2.オンラインディベートの欠点

 それを踏まえての本題というか、個人的な価値観の投げかけです。

 今のままオンラインを続けても良いと思う反面、実はオンラインディベートによって発生する新たな「不公平さ」というのは実のところ透明化されているのではないか、と思ったので。格差の是正、とスピーチ中に訴える諸兄だからこそ、この問題はちゃんと見つめてほしいわけです。

 

a)環境整備にはお金がかかるよ

 オンラインディベートは確かに便利です。PC一台あればどこからでも参加できるし、遠征費用等は発生しません。一見するととても「公平」に見えます。

 ですが、その一方で新たに発生する、経済的な格差問題というのもまた事実だと思います。

 というのもこの「オンライン環境」というものは、参入にあたって必ずオンラインに対応したデバイスが必要になるんです。PCだったりスマホだったりインターネット回線だったり、人によってはマイクとかもありますが。

 たまに耳にする「PCが不調な時は予備のデバイスを使いましょう」みたいな論調、僕はめちゃくちゃ怖いと思います。なんでみんながみんな予備のデバイスを持っている前提で話が進むんでしょうか。PCの他にタブレットを持っていたり、ポケットWiFiのバックアップに別回線があったり。

 それが「当たり前」として通用するのって、実はめちゃくちゃ恵まれている環境だと思うし、恵まれてる人達だなと思うんですよ。僕が学生の頃、自分の家にPCがなくて大学の貸し出しPCでレポートを書いている友人はたくさんいたし、スマホでポチポチとレポートを書いている人もいました。

 ネット環境だって、回線速度は契約しているプランに応じて変わるし、それによって音質やら通信の安定度やらも変わってきます。これって全部その人が持っている資本によって決まるんですよ。文化資本、経済資本、親ガチャ。しかもリセマラできないですしね。

 学校教育をタブレットで行う、というニュースが出た時に、それに対応できない人達はどうするのか、という議論を目にしました。まじでそれと同じだと思います。PC一台、タブレット一台、ネット回線契約等々、初期投資だけでも結構な額が必要になりますよね。

 設備投資をできる人だけが参加でき、環境改善を積極的に行える人が環境的なアドバンテージを獲得できるの、個人的には「公平」とは少し離れてしまうのでは、と(あとは単純にネット環境に強い/明るい人じゃないとハードル高いですよね。デジタルネイティブ世代はそこら辺のハードル低いかもしれませんが、苦手意識ある人は一定数いるので)。

 確かにオンラインディベートは色々なメリットを齎しますが、その裏で発生する見えない「格差」というものに、少しだけ思いを馳せましょう。まぁ馳せたからとオンラインしかディベートする環境がない現状では何ができるわけでもないんですが。

 

b)非言語面が伝わりづらいよ

 これはzoom等でカメラ機能をオンにすればある程度解消できるとは思いますが、それでも対面で感じる「スピーチのノンバーバルな側面」というのはかなり大きいです。ジェスチャーだったりボディランゲージだったり、目線だったりといったノンバーバルな部分というのもスピーチの重要な位置を占めています。

 オンラインの良くないところは、ほぼ音声だけで判断しなければいけないところです。これはこれでバイアスを回避できるっていうメリットはあるんですが、ジャッジの目を見てスピーチできない、っていうのは大きいと思うんですね。ジャッジの表情を見ながら、どこまで伝わっていてどこからは言い直した方がいいとか、自分のスピーチをちゃんと取ってくれているなとか、そういうのを確認したい瞬間ってあると思うんです。

 自分のスピーチや言語面に自信がある人はいいんですが、僕のように表現がたどたどしくなったり、非言語面も含めてジャッジにニュアンスを伝えるのが得意な人からしたらこの「音声だけ(カメラオンにしても割と一方通行)」というのは結構な弊害だったりします。

 

c)みんなに会いたいよ

 こっから先は建設的な要素皆無です。タメになる議論が読みたい人はここら辺でブラウザを閉じてください。もう一度言います、ここから先は超個人的な愚痴です。

 ゆーて色んな人に会いたくないですか、オフラインで。僕は会いたいです。オフライン特有の、ORで顔を見合わせる楽しさだったり、ラウンド終わりに部屋の外でする談笑だったりコミュニケーションだったり、予選終わりにみんなで行く居酒屋だったり。

 言ってしまえばディベートの「競技性」とは関係ない側面だけど、これらの副次的な側面も込みでみんな「ディベート」を楽しんでいたと思うんです。

 以前「ディベートにかこつけて酒飲みたいだけじゃん」みたいな、斜に構えてる俺カッケー風の意見見かけたことあるんですが、それの何が悪いんですか?ってゆー。人は一人になりたがるが独りでは生きていけない、みたいな感じで、ディベートは好きだがディベートだけでは大会は楽しめないんですよ。

 まぁこの辺に関しては割と同意してくれる人が多いので嬉しいですね。

 

d)遠征したいよ

 遠征って確かにお金がかかるし体力的にもしんどいけど、それそのものがちっちゃな修学旅行感というか、プチ旅行感あって最高なんですよ。名古屋は手羽先とか味噌煮込みうどん食べながら飲むビールがうまいし、関西はお好み焼きやたこ焼き食べながら飲むビールがうまいし、博多はもつ鍋と鶏皮と明太子食べながら飲むビールがうまいんですよ。それを遠征仲間を分かち合うという、「時間と空間を共有している感覚」っていうのが遠征の醍醐味だと思うので、結構恋しいですね。

 これも前述のように「お前ディベートしたいの?それとも旅行したいの?」って聞かれると思うんですが、僕は「ディベート旅行がしたい」んですよ。伝われ、この思い。

 

3.それ踏まえての将来的な折衷案

 じゃあどうしたらいいの?っていう問題提起に対する解決策の提示なんですが、これに関しては今後の社会の潮流を踏まえて考えたいと思います。

 というのも昨今では新型コロナウイルスに対するワクチン接種が各国で始まり、日本も近いうちに市場に出回ると思います。まぁこのワクチン接種=安全っていうのはかなり危ない図式なのは間違いないですが、今の「感染者が〇〇人!危険!」みたいな(ちょっといき過ぎた)状態からは幾分沈静化すると思います。となると来年の夏〜冬頃には徐々に社会的な緊張も緩和され、オンライン一辺倒だったあれやこれやもオフラインに戻ってくると思うんですね。

 ディベート大会も例に漏れず(まぁ大学の施設貸し出し状況に依存はしますが)オフライン大会が徐々に行えるようになってくるとは思います。

 ここで前述に遡りたいんですが、オフライン大会もオンライン大会も、どちらにもメリットデメリットがあり、これの解消手段は現状あまりないです。

 となった時にコミュニティとして採るべきなのは、「いくつかの大会はオンラインのまま残す」という選択肢なのでは、と。例えばメジャー大会の1つは従来のオンラインの形態を採る、とか。

 これをするためには年度の早い段階で各地域ごとに年間スケジュールを調整する必要があるので割と密な連携が必要になってくると思います。結構大変そう。

 それこそ旧来の大会を統廃合して「○○ Online Open」みたいな名前にして最強決定戦をしたら盛り上がると思うし。まぁ僕がこうして好き放題言えるのは単に一線を退いたOBというポジションだからなわけですが。

 

 でも近い将来、この問題は必ず直面すると思うんです。

 今オンラインディベートが定着したからこそ、どの程度までオフラインに戻すのか、戻さないならそれはどの大会までにするのか、早め早めにコミュニティ全体で議論した方がより良い大会設計ができると思います。

 (個人的には大学の練習環境もオンラインとオフラインの双方を両立できたらより包括的になる気はしますね。執行代の負担は増えてしまいますが……)

 

 

 と、建設的な締めくくりっぽい何かができたのでここら辺で終わりたいと思います。

 それでは。